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今回は個人クリニックを事業承継する際の退職金についてです。個人のクリニックを事業承継し、従業員を継続雇用とした際に、「従業員の退職金は譲渡側と譲受側のどちらが支払うべきか」、また「継続雇用にもかかわらず、退職金はそもそも支払う必要があるのか」といった質問をよくいただきます。今回はそのあたりについて、基本的な内容を紹介していきます。
退職金は退職時までに提供した役務提供、すなわち労働対価の後払いとしての性格をもつと考えられています。ですので、退職という事実が起こった場合には支払わなければならないという意味で潜在的責務といえます。
しかし、退職金を支払うことは必ずしもの義務ではありません。就業規則には、退職に関する事項を定める必要はあるものの、退職金の支払について定めるかどうかはそのクリニックの任意です。したがって、就業規則に退職金や退職手当に関する定めがなければ、退職金を支払う義務は発生しないと考えます。
個人クリニック・診療所において、院長やその配偶者にとっては、「万が一のことがあったとき」、また「後継者に事業を承継したとき」に退職金を受け取りたいところですが、個人開設の場合には、本人または遺族は退職金を受け取ることができません。
先述のとおり、退職金は労働対価の後払いとしての性格があります。院長は個人事業主であるため、このような性格を有する退職金を支給することはできないということになっています。
ただし医療法人であれば話は別です。医療法人のクリニック院長やその配偶者は、遺族または本人として、医療法人から死亡退職時には「死亡退職慰労金、弔慰金、特別功労金」を、また通常退職時には「退職慰労金、特別功労金」を受け取ることができます。
原則として、退職金は退職給与支給規定や就業規則などに基づいて算定されることになります。
そして、今回のような個人クリニックが事業承継され、従業員が継続雇用となった場合ですが、職員は一度退職し、新たなクリニックで再び新規雇用ということになりますので、元のクリニックで退職金の取り扱いが規定されていれば、退職という事由が発生していますので退職金は発生することになります。
またどちらが支払うかという点については、退職金の労働対価の後払いという性格などを考慮すると、譲渡者が事業承継時点までの退職金を従業員に支給するのが一般的な考えとなります。実際にそういったケースがほとんどです。
ですので、事業承継を検討する際には、自クリニックの退職金規定はどうなっているのか、また退職金はどのくらい発生しそうなのか、早めに確認しておくことが大切といえます。
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